龍の絵画土器には人だかりです | |
平成25(2013)年3月2日(土)午後1時より、今治市新谷に所在する新谷森ノ前遺跡2次の現地説明会を開催しました。 この遺跡は、国土交通省より委託を受けた当センターが、国道196号今治道路建設に伴う埋蔵文化財発掘調査として平成24年度に行ったものです。 調査では古代の掘立柱建物や溝、弥生時代の竪穴建物などが確認され、特に龍を描いた弥生土器が出土した事で大きな話題を呼びました。前日の雨で現場の状態が心配されていましたが、当日は春の陽気に恵まれて多くの方々に建物群や溝の整然とした配列や遺物の出土状況などを見学していただきました。 新聞で大きく報道された龍の絵画土器にはたくさんの人だかりができました。この龍の絵画は全国的にも非常に珍しい発見であり、郷土の歴史を解明する上でも貴重な発見として強い関心が集まりました。 なお、現地説明会当日には約340人の方々が集まってくださいました。みなさまに心より感謝申し上げます。 |
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たくさん検出された遺構の説明には、多くの方々からの質問が飛び交いました 整然と並んだ掘立柱建物は、当時の官衙関連施設を連想させます 遺物の展示コーナーでは、発見されたばかりの遺物が並びました |
: 遺跡の概略 : | |
平成24年度の今治道路建設に伴う埋蔵文化財調査は、現在新谷地区・古谷地区・下経田地区の2地区3箇所で行っています(今回の現地説明会は、新谷地区の新谷森ノ前遺跡2次を対象とします)。 古谷尾ノ端遺跡は頓田川の中流域に広がっている遺跡で、今年度調査した調査区では、弥生時代中期・後期、古代(8〜9c)、中世(12〜13c)、近世から近代(江戸末〜明治初)の各種遺構・遺物が検出されています。 弥生時代後期(約1,900年前)の遺構では最大長約50mの溝が検出され、大量の弥生土器廃棄が確認できました。また、溝に隣接する谷部からも同様の廃棄が確認されており、祭祀遺構の可能性が考えられます。 特筆すべき点として、これらの弥生土器の中には、絵画土器が3点確認されていることがあげられます。 二点は胴部2箇所に龍が描かれていた壺形土器と、同じく龍の描かれた壺型土器の破片で、もう一つは頸部付近に船を描いた鉢形土器です。 これらの絵画については類例が少なく、特に1個体の土器の2箇所に龍を描いたものは県内では初例です。船の絵画については県内では3例目で、今治市では下経田遺跡に次ぐ2例目となりました。 古代では、南東側の調査区において規則的な配置を示す掘立柱建物群と、幅3m、深さ0.8mの大規模な溝が40mにわたって確認されました。溝からは赤色塗彩土師器や須恵器の杯蓋を転用した硯、緑釉陶器、瓦などが出土しており、一般集落の遺物とは異なっています。このことから掘立柱建物群は官衙関連遺構である可能性が高いと言えます。 また、建物の柱穴からは弥生時代後期ころの中国製青銅鏡(方格規矩鏡)の破片が出土しています。 谷をはさんで北西側の調査区では、規則性は認められないものの多数の掘立柱建物が検出されており、官衙関連施設に関わる集落と推定できます。 |
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新谷森ノ前遺跡の龍 | |
溝・弥生時代後期土器出土状況 | |
整然と並ぶ古代の建物 |
現地説明会資料[PDF] (6.3MB) |